【ひろしまNPO人物ファイル⑦】県立広島大学 地域創生学部 准教授・日本語教師 中石ゆうこさん – 言葉を好きな気持ちが、社会を考えるきっかけに。多文化共生は「フラットな気持ちで、無意識にやっていることにならないと」

ひろしまNPOセンターでは日本国際交流センター(JCIE)休眠預金活用事業の実行団体として、2024年4月~2027年2月まで「外国ルーツを持つ若者が自ら進路を選べることを支える官民一体となった仕組み構築事業」(外国ルーツ若者キャリア支援事業)に取り組んでいます。外国にルーツを持つ若者*がことばや文化の違いにかかわらず、進学や就職の情報にたどりつき、キャリアを選べる社会を目指し「支援者がつながることで、よりよい支援を提供できる」という想いで活動しています。 *本事業では高校生世代を想定
シリーズ「ひろしまNPO人物ファイル」では、外国ルーツを持つ若者の支援者に焦点を当て、活動や人物についてご紹介します。今回ご紹介するのは、県立広島大学の准教授、中石ゆうこさんです。大学院時代から現在も日本語教師として留学生などに日本語を教えながら、研究者としても日本語教育を専門とされています。日本語教師を目指すきっかけとなった「言葉」への関心や、日本語教育がつないだ社会テーマへの関心、それらを考える視点についてお聞きしました。
(聞き手・文・写真:事業スタッフ 吉本)
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吉本:中石さんは県立広島大学の准教授として、日本語教育を研究し、学生に教えていらっしゃいます。まずご専門をお聞きしてもよいでしょうか?
中石:日本語教師として外国人を対象に日本語を教える中で受けた質問などから着想を得た日本語教育や、外国にルーツを持つ子どもの言葉の発達などを研究しています。言葉が大好きというところから始まっていて、もともと日本語の文法を専門にしてきました。最初は虫の目で日本語を見ていたけど、言葉は社会の中で使われていることに気がついて。鳥の目も持って、社会のことも考えたいと思っています。
吉本:言葉が好きというところと、日本語教育の道に進むきっかけをもう少し詳しくお聞きできますか?
中石:幼稚園か小学校のときに買ってもらった本を読みながら、ここには助詞が足りない、と自分なりに文章を直していました。子どもの感覚なので、あとで見ると間違っているんですけどね。他にも、祖母に「ばあちゃん、水」と言ったら「ばあちゃんは水じゃない」ってからかわれて(笑)。なんでだろう、と思っていました。大学で日本語教育を専攻して沼にはまり、言葉にずっと向き合える職業として、大学院生のときから日本語教師をしています。クラスに行くたび答えられない質問をされて、それに答えたくて続けてきました。今も大学で留学生に日本語を教えています。
吉本:留学生に日本語を教えていて、これは新しい視点だな、と思った質問はありますか?
中石:ちょうど今、カタカナ語彙を教えていて「ドライな人とクールな人は何が違いますか?」とよく聞かれます。あとは、日本語の「コネ」は英訳を見ると「connection(コネクション:つながり・関連の意味)」と書いてあるけど、例えば先生に「コネがありますか?」と聞くと失礼ですよね。辞書には理由が書かれていないんです。それを説明するのがおもしろいです。
吉本:考えたことがなかった。たしかにおもしろいです。留学生に日本語を教えながら、子どもの日本語教育にもご関心をお持ちですね。
中石:大学院生のとき、留学生が「歯医者に行ってすごく怖かった」と言っていて。「キシキシ」とか「カチカチ」とか、何をすればいいのか分からなくて困ったそうです。一方で、日本語母語話者の子どもはまず「(水を)ジャーする」のようにオノマトペを使い始めて、それから「水を流す」と動詞を使うようになりますが、日本語学習者にはオノマトペが難しい。じゃあ小さいころ外国から日本に来た子どもはどうなんだろう?と、オノマトペから子どもの日本語教育を考えるようになりました。
吉本:中石さんは日本語教師、研究者として外国にルーツを持つ方たちや日本語教育に関わっておられますが、地域の私たちにもできることは何だと思いますか?
中石:フラットな気持ち。これは絶対ですね。教えてあげるとか、助けてあげるとかじゃない。次から自分でできるように、今、一時的にはどういう助けが必要か。助けられるばかりだと、劣等感だけ植え付けられてしまって、生きづらいと思うんです。もしかしたら地域の外国人のほうが自分よりも知識を持っていて、教えてもらえることがあるかもしれない。
吉本:多文化共生という言葉だけが独り歩きしがちですが、持ちつ持たれつの関係ってまさに共生ですね。
中石:無意識にやっていることにならないといけないのかなと思いますね。私にはマレーシア出身の友人がいるんですが、この前、私が三脚と脚立を間違えたときに「それは脚立ね!」と直してもらって。彼女との関係で多文化共生とか考えたことがないんです。最終的にはこの言葉もなくなるのが理想。言葉があることでもやもやしていたことが可視化されるけど、あることで意識し続けることになるというか。
吉本:言葉のことをずっと好きでいる中石さんならではの視点だなと思います。
中石:言葉、やっぱり楽しいんですよね。辞書用の棚、作りましたもん。国語辞典、中国の料理用語辞典はどこだったかな……(研究室にある本棚と辞書を楽しそうに見せてくださる中石さん)
吉本:全部辞書ですか!すごい。
中石:言葉が好きということは、船のいかりとして持っておかないといけないと思います。日本に暮らす人たちにとって、日本語は生活を豊かにするために必要なものだけど、それを無理強いしないスタンスも常に持たないといけないと思います。社会の中で絶対に守ってほしいこともあるけれども、それ以外は誰かが決めるんじゃなく、それぞれが当事者になって、話し合って決めていかないといけない。あきらめずに対話をしていくことですね。
吉本:言葉を通して共生を考える機会になりました。中石さん、ありがとうございました。
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