【ひろしまNPO人物ファイル⑧】ひまわり21/ワールド・キッズ・ネットワーク代表 伊藤美智代さん – 日本語教室は「家族」。みんなの意思と自主性を大事に、安心できる居場所づくりを

ひろしまNPOセンターでは日本国際交流センター(JCIE)休眠預金活用事業として、2024年4月~2027年2月まで「外国ルーツを持つ若者が自ら進路を選べることを支える官民一体となった仕組み構築事業」(外国ルーツ若者キャリア支援事業)に取り組んでいます。外国にルーツを持つ若者*がことばや文化の違いにかかわらず、進学や就職の情報にたどりつき、キャリアを選べる社会を目指し「支援者がつながることで、よりよい支援を提供できる」という思いで活動しています。*本事業では高校生世代を想定
シリーズ「ひろしまNPO人物ファイル」では、外国ルーツを持つ若者の支援者に焦点を当て、活動や人物についてご紹介します。今回ご紹介するのは、呉市の日本語教室で活動する伊藤美智代さんです。地域の日本語教室に関わり続けて30年以上。学習者からは「お母さん」と呼ばれることもあるそうです。伊藤さんにとって、学習者にとって日本語教室はどんな場所なのか、活動の背景や大事にしていることとあわせてお聞きしました。
(聞き手・文・写真:事業スタッフ 吉本)
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吉本:まず、伊藤さんは普段どんな活動をされていますか?
伊藤:呉市の任意団体「ひまわり21」と「ワールド・キッズ・ネットワーク」の代表をしています。「ひまわり21」は呉市が主催する地域日本語教室「日本語教室《呉》」と「せかいの花2018~」の運営をしています。委託ではなく、呉市から運営謝金をいただいて活動しています。「ワールド・キッズ・ネットワーク」は外国にルーツを持つ子どもの支援を中心として「こども日本語教室 シランダ」、白岳小学校で「放課後クラブ アミサージ」、白岳中学校で「放課後クラブ ジニア」を主催・運営しています。こちらは行政や民間の助成金を活用しながら、自分たちでやっています。
吉本:活動を始めるきっかけには、どんなことがあったのでしょうか。
伊藤:1990年ごろ、町で外国人の方を見かけることが増えたんです。そのころは私の子どもが小学生でした。小学校に通う外国籍の子どもたちが学校行事を休んでいたり、その保護者の方たちが参観日に学校へ来ても教室に入らず廊下や中庭で遠慮していたり。この状態が進んだらどうなるんだろう?誰かが何かしなきゃいけない、と思っていました。そんなとき、市役所が地域日本語教室を立ち上げるからボランティアを募集する、と市政だよりで見たんです。思いきって飛び込みました。何も知らない、何もできない状態だったけど、行ってみようと思って。
吉本:その後、2001年に「ワールド・キッズ・ネットワーク」を設立されています。どんな経緯があったのでしょうか。
伊藤:あるころから「日本語教室《呉》」に小学校高学年から中学生くらいの外国籍の子どもたちが親に連れられず、友達同士で来ることが増えたんです。日本語のこと、勉強のこと、将来のこと…… 不安やストレスがたくさんあるようでした。親が家に帰る時間が遅いみたいで「親が帰ってくるまで、じっとしているんだ」と言っていましたね。子どもたちを支援する活動が必要だと思って立ち上げたのが「ワールド・キッズ・ネットワーク」です。最初は子どもたちを夏休みに集めて宿題を一緒にしました。生まれた国の言葉や文化を大事にする時間もとっていました。
吉本:伊藤さんが日本語教室の活動をする中で心がけていること、大事にしていることはありますか?
伊藤:安心できる場所を作ることを一番大事にしています。今日の「せかいの花2018~」には、教室を立ち上げたころの学習者さんが何年かぶりに遊びに来てくれました。ふらっと立ち寄れる、そういう実家みたいな感じがいいのかな、と私は思っています。本人の意思を尊重することも大事ですね。がんばる、がんばらない、は本人の意思なので、学習者さんにあまり口出しはしません。日本語教室ってどんなところ?と学習者さんに聞くと「家」「家族」って言う人が多いんです。家族と離れているから、そんなふうに思うのでしょうね。元学習者さんの中には私を「お母さん」と呼ぶ人もいて、母の日にプレゼントを送ってくれるんですよ。
吉本:家族のような場所と関係、素敵です。昔の学習者さんが久しぶりに遊びに来てくれたように、活動をしていてよかったなと感じる瞬間はありますか?
伊藤:うれしいこと、しょっちゅうあるんだけどねえ。最近だと、2026年5月3日に開催した「フェスタひまわり」。学習者さんが中心になって企画する発表会のようなものです。「日本語教室《呉》」の活動として、コロナ禍までは開催していました。当時の学習者さんは3年ほど日本で働いて自分の国に帰る技能実習生の人が多くて、外出自粛が明けたときには企画の経験者がいなくなり、開催する機運がなくなってしまいました。そしたら2025年冬、今は県外で働いている元学習者さんから「フェスタひまわりをもう1回やってほしい。先生たち(伊藤さんやスタッフ)がかわいそう」と連絡があって。活発に活動していた元学習者さんにはそんなふうに見える…… ショックだったんです。またやろうか、と思って、今の学習者さんたちに何をしたいか聞きました。あれをやりたい、これをやりたいとアイデアが挙がって、プログラムを組んで。学習者さんの自主性に任せました。地域に公開はしなかったのですが、それでもフェスタ当日は約70名が集まりました。
吉本:学習者さんの自主性を大事にするから、自信が身につくのでしょうね。
伊藤:それもすごく大事。主体的な活動じゃないとつまらないと思うから、学習者さんも、ボランティアで来てくださっているスタッフの皆さんも、どんどんアイデアを出してほしい。関わり方は人それぞれでいいんです。
吉本:皆さんで活動を作っている印象があります。
伊藤:スタッフの高齢化が進んできて、活動を昔のようにはできなくなってきています。でもそれは、学習者さんがより主体的になれるチャンスだと考えればいいと思っていて。「フェスタひまわり」の料理交流会と発表会では、司会とパソコン操作を学習者さんにお願いして、ボランティアスタッフはサポートに徹しました。全部任せて大丈夫なんだ!って思えたんです。自由にやってもらって、私たちはちょっと手伝うだけでいい。自主性は今までも大事にしてきたけど、これからはもっともっと、学習者さんに任せていこうと思います。
吉本:伊藤さん、ありがとうございました。
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