【ひろしまNPO人物ファイル⑫】中国人ママクラブ 王丹さん – 人のやさしさ、あたたかさに目を向け、地域のつながりを作る。言語や文化の交流で「人生に色がつく」体験を

ひろしまNPOセンターでは日本国際交流センター(JCIE)休眠預金活用事業として、2024年4月~2027年2月まで「外国ルーツを持つ若者が自ら進路を選べることを支える官民一体となった仕組み構築事業」(外国ルーツ若者キャリア支援事業)に取り組んでいます。外国にルーツを持つ若者*がことばや文化の違いにかかわらず、進学や就職の情報にたどりつき、キャリアを選べる社会を目指し「支援者がつながることで、よりよい支援を提供できる」という思いで活動しています。*本事業では高校生世代を想定
シリーズ「ひろしまNPO人物ファイル」では、外国ルーツを持つ若者の支援者に焦点を当て、活動や人物についてご紹介します。今回ご紹介するのは、呉市で「中国人ママクラブ」を企画・運営する王丹(おう・たん)さんです。呉市に暮らす中国ルーツのお母さんたちが集まる場づくり、子どもたちが母語である中国語と接する場づくりを中心に活動されています。国籍に関係なく地域とのつながりを持ちたいという王さんに、活動の背景にある実体験などをお伺いしました。
(聞き手・文・写真:事業スタッフ 吉本)
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吉本:まず、中国人ママクラブについてお伺いしてもいいでしょうか?
王:中国人ママクラブは、呉市に住む中国のお母さんたちの助け合いグループです。最初は中国の子どもたちを対象に活動を始めました。子どもたちの母語教室として、中国語でゲームをしたり遊んだりしていました。そのうち中国のお母さんたちが生活の中で悩むことも多いと知って、みんなで集まって話せる場を不定期で持つようになり、今の形になりました。中国人だけの集まりじゃなく地域とつながれるといいなと思って、月1回、呉市国際交流協会の協力で、地域の方に向けた中国語を話す会も開催しています。
吉本:なぜ子どもたちの母語教室を始めようと思ったのですか?
王:中国の子どもたちが母語を忘れないためです。日本で育ち、中国語で話す機会がない子どももいます。「子どもに中国語を教えたい」というお母さんも周りにいたんですが、習い事だとお金がかかりますよね。じゃあお金をかけないでいいように、自分たちで団体を立ち上げたらいいじゃん!と思ったんです。プロみたいな教え方はできないけど、中国語でちょっと何かできたらいいなって。活動では子どもと大人が一緒に劇をやったり、テーマを決めて話したりします。これを覚えなさい、これを読みなさい、と言うと、子どもは「難しい」とか「日本で生活しているから中国語は使わない」と嫌がります。無理にやらせると、母語を嫌いになってしまいます。やっぱり母語を好きであってほしいし、中国語を話せることがちょっとした自慢であってほしい。中国語が流ちょうな日本人の方に出会って「自分もがんばりたい」という気持ちになってくれたり、喜んで参加してくれたり。いろんな角度から子どもたちに刺激を与えてあげて、自発的になってくれたらいいなと思っています。
吉本:子どもたちの母語教室から始まって、お母さんたちが集まれる場づくりにつながり、活動を展開されています。活動していて、よかったと思うことはありますか?
王:「子どもが日本の生活に慣れなくて、自分も日本の食べ物に慣れない」というお母さんがいらっしゃいました。言葉の壁があるし、日本に友達もいないから「中国に帰りたい」と言ったり、泣いたりもしていて。そのときみんなで集まって、そのお母さんの悩みを聞いてあげました。それから時間が経って、だんだん生活に慣れていったみたいでした。悩みが解決するわけではないかもしれないけど、聞いてくれる人がいるだけで変わってくる。この活動に意味があるんだなと思いました。
吉本:大事な活動ですね。王さんご自身が日本に来られたきっかけをお聞きしてもいいですか?
王:留学がきっかけで2008年、神奈川に来ました。荷物を背負ってひとりで日本に来て、何も分かりませんでした。留学を支援してくれていた県庁の方が迎えに来てくれたり案内してくれたり、すごく支えてもらいました。その後、大阪に引っ越しました。そのときは妊娠していて、坂道が多い街を歩くのも大変。バス移動をしていたんですが、ある日バスを降りたとき、知らないおばあちゃんが大きなブドウと子どものおもちゃをくれたんです。「どうぞ、受け取ってください。子どもと一緒に遊んでくださいね」って。いつもバスを待つ間にあいさつをする程度のおばあちゃんです。私を見るたび「大変そうだな」と思ってくれていたんでしょうね。私も自分にできることがあるなら役に立ちたい、恩返しがしたい、と思いました。
吉本:呉市に移住し、住む場所は変わっても、そのやさしさをお返しされているんですね。
王:初めて呉市に来たときは友達もいなくて、孤独を感じていました。あるとき、公園でたまたま中国人のお母さんと知り合いました。私がさみしくて泣きそうな顔をしていたら、そのお母さんが「呉市には中国人のグループがあるから、入ってみたら?」と教えてくれました。そこに入ったら、いろんなお母さんとのつながりができて、呉市で開かれている日本語教室のことも知りました。地域の方たちとつながりがあると、自分の人生が豊かになるような気がしています。しそジュースを作れる人、手縫いが上手な人…… 先輩みたいに、知らないことを教えてくれます。こういう活動をしていなかったら、出会わなかったかもしれない。言語を通して知り合いになって、街で見かけて「こんにちは」と言えることが嬉しいですね。
吉本:街の中にそんな関係性があるのは素敵です。
王:外国人の方たちにも、そんなつながりを持ってほしいですね。自分のコミュニティだけじゃなく、広がっていくとおもしろいと思います。例えば私はフィリピンやベトナム、タイの方とつながって、今まで食べたことがないものを知れたり、野菜をもらったり、私からも中国のものをあげたり。人生に色がつくみたいです。いろいろな人がいること、いろいろな文化があることが分かると、子どもたちにも良い影響があると思います。最近、外国人差別のニュースを耳にします。でも、困っている外国人の方がいたら助けてあげたい日本人の方も多いと思います。私自身、差別されたとか、そんなふうに感じたことはなくて、心あたたまるような出来事ばかり。どんな国でも意見や好き嫌いが分かれることはあります。でも、そればかりじゃない。冷たいことを言う人もいるかもしれないけど、やさしい人もたくさんいるんです。そっちに目を向けられたらいいかなと思いますね。
吉本:いろいろな人からのやさしさを経験された王さんだからこそのお話でした。王さん、ありがとうございました。
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