ひろしまNPO人物ファイル

【ひろしまNPO人物ファイル⑬】広島大学 大学院人間社会科学研究科 准教授 小口悠紀子さん – もしもに備えて自助力と共助力をはぐくむ。対話とフラットな関係性を生み、地域をつなぐ防災学習

2026 . 09 . 29

【ひろしまNPO人物ファイル⑬】広島大学 大学院人間社会科学研究科 准教授 小口悠紀子さん – もしもに備えて自助力と共助力をはぐくむ。対話とフラットな関係性を生み、地域をつなぐ防災学習

 

 

ひろしまNPOセンターでは日本国際交流センター(JCIE)休眠預金活用事業として、2024年4月~2027年2月まで「外国ルーツを持つ若者が自ら進路を選べることを支える官民一体となった仕組み構築事業」(外国ルーツ若者キャリア支援事業)に取り組んでいます。外国にルーツを持つ若者*がことばや文化の違いにかかわらず、進学や就職の情報にたどりつき、キャリアを選べる社会を目指し「支援者がつながることで、よりよい支援を提供できる」という思いで活動しています。*本事業では高校生世代を想定

シリーズ「ひろしまNPO人物ファイル」では、外国ルーツを持つ若者の支援者に焦点を当て、活動や人物についてご紹介します。今回ご紹介するのは、広島大学大学院の准教授、小口悠紀子さんです。日本語教育学を専門とする研究者でありながら、社会貢献活動として、防災と多文化共生を考えるワークショップを実施されています。なぜ、防災学習だったのか。多文化共生の視点で大事にしたいこととは―― 活動を始める経緯やそこに込められた思いをお聞きしました。

(聞き手・文・写真:事業スタッフ 吉本)

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吉本:まずは小口さんのご専門とご活動についてご紹介いただけますか?

 

小口:専門は日本語教育学で、第二言語習得研究、タスク・ベースの日本語教育、日本語学習者を対象にした防災タスク開発などに取り組んでいます。防災学習関係の研究としては、日本人と外国人が同じ場所に集まるコミュニティ空間をデザインし、参加者たちがどんな対話をしてどんな学びを得たのか調べたり、参加者が繰り返し足を運ぶことでどのように内側の人材として活躍するようになるのか観察したりしています。防災学習を通した多文化共生のまちづくりをテーマにワークショップなども実施しています。

 

吉本:「やさしい日本語」講座などに防災学習のワークショップで出向かれていますよね。小口さんが実施している防災学習について、詳しくお聞きできますか?

 

小口:LEGOを使って「理想の避難所づくり」を実施しています。まずは5人ぐらいのグループで対話を通して情報を寄せあい、災害時の避難生活を思い浮かべながら、LEGOで避難所を作っていきます。途中で「充電」「ペット」「赤ちゃん」などのピクトグラムカードを順に配っていくことで、参加者たちは避難生活に欠かせないものの存在に意識を向けたり、避難所には多様な人たちが来たりすることに気づきます。例えば「スマートフォンの充電が切れたら困るから充電スポットを作ろう」「充電を待つ間に座るためのソファが要るんじゃない?」とか。子どもたちが「赤ちゃんのおむつを換える場所も要るよね」と言い出すこともあります。ペット連れの人を想定するときは「ペットも家族だから避難所の中にいれてあげよう」という意見もあるし「動物アレルギーの人がいたらどうする?」という意見も。もしグループにムスリムの方がいたら、お祈りのときに何が必要なのか聞くこともできます。

 

 

LEGOを使用した防災学習(提供:小口悠紀子さん)

 

吉本:この形の防災学習を発想するきっかけにはどんなことがあったのでしょうか。

 

小口:高校3年生のころから地域日本語教室に参加していたのですが、続けるうちに、地域日本語教室には「日本語母語話者が偉い」というイデオロギーがどうしてもつきまとうことの難しさを感じるようになりました。防災学習を始めるきっかけは、2018年7月の西日本豪雨。当時、私は妊娠中だったんですが、夫を少し離れた距離の会社まで車で迎えに行くことになって。夫や赤ちゃんの命のことを考えながら、自分と赤ちゃんを守るだけで精一杯だ。お腹が大きいと動きにくくて、教え子全員の命まで守りきれないかもしれない、と考えていました。ハンディキャップが増えることでこんなに大変で不安なんだ、とも思いました。じゃあ、日本語非母語話者として異国の地で暮らす人たちにとって、災害時はどれだけ不安だろう。海外から日本に来て、防災学習を受けたことがない人や地域の情報を知らない人は災害時、情報弱者になってしまいます。逆に、2018年の豪雨災害時には、多くの外国人住民が被災地で土砂を掃き出す手伝いなどを進んでしてくれた話も聞いています。自助と共助を普段からちゃんとしておくことが大事なんだ、と思ったんです。「教える・教わる」関係性をフラットにするには?と考えながらやってきて、誰もが詳しいわけではない防災というテーマは、地域日本語教室のように外国人と日本人の交流が生まれる空間づくりのテーマとしてしっくりきました。LEGOもおもしろくて、大人より子どものほうがよくできたり、「小さいときに遊んでいたから」とすごく上手に作る留学生がいたりするんです。

 

吉本:小口さんの視点から、多文化共生をかけ合わせた防災学習の大事さはどんなところにありますか?

 

小口:災害発生時のことだけを教えても助け合う関係性は生まれないので、一緒に何かをすることが大事だと思っています。専門家は不在で、自分たちが知っている情報を出し合う。言わば、避難所は街の縮図。避難所を作る過程の中で多様な人が暮らしやすくするためのやりとりが生まれて、その空間に外国人も日本人もいることが当たり前なんだと体感してもらい「みんな、自分と変わらない」と気づいてもらえたらいいなと。地域日本語教室では外国人の方の小さな悩みごとや困りごとを聞くといったことが日々起こっていますが、そこに関わっていない人たちとの間にギャップもあると感じます。街に住む外国人の方の声を拾う場が地域日本語教室以外にもあれば、もっとお互いが理解し合えたり、不安がなくなったりするのかな。「やさしい日本語」を使えば一緒にできることがあるとか、LEGOを使えば言葉があまり通じなくても分かり合えるとか…… もし同様の活動をしたい地域があればLEGOをお貸しできますし、ワークショップのご依頼があればどこでも行きますよ。

 

吉本:地域でできることにも可能性がありそうです。普段からまずできることには、どんなことがあると思いますか?

 

小口:まずは近所の人に挨拶をすることですね。近所に外国人の方がいたら「お国はどこですか?」と聞くことから始めて「困ったら家にピンポンしてね」と関係性を築いていく。ほうきを持って「一緒に地域清掃へ行こう」と声をかけるとか。「地域清掃に誘われなかった」という留学生、けっこういるんですよ。外国人の方たちにとって「住み心地が良い」と思うのは、まだお客様に近い状況だと思います。「もっとこうしたらいいんじゃないか」と意見を持って、住みこなせるように変わっていってほしいです。

 

吉本:小口さん、ありがとうございました。

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小口悠紀子さんにご連絡を取りたい方は、下記までお問い合わせください。お問い合わせ時は「ひろしまNPO人物ファイルを見た」とお伝えいただくとスムーズです。

▽お問い合わせ
ひろしまNPOセンター(担当:吉本)
電話:082-258-1348(2026年10月1日から新番号:082-299-3250)
メールアドレス:yoshimoto☆npoc.or.jp(☆を@に置き換えてください)

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