【ひろしまNPO人物ファイル③】竹屋にほんご教室 美濃みね子さん – 海外で受け取ったやさしさを日本で返す。日本語教室を通した「血が通った国際交流」

シリーズ「ひろしまNPO人物ファイル」では、外国ルーツを持つ若者の支援者に焦点を当て、活動や人物についてご紹介します。今回ご紹介するのは、広島市中区の地域日本語教室「竹屋にほんご教室」(詳細はページ下部)をボランティアとして主宰する、美濃みね子さんです。広島市内の中学校、台湾の日本人学校で勤務。帰国し中学校教員を定年退職後、日本語教室を開設されました。今に至るまでの経験や、教室を運営する想いについてお聞きしました。
(聞き手・文:事業スタッフ 吉本)
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吉本:まず、美濃さんの活動についてお聞きできますか?
美濃:竹屋にほんご教室で広島在住の外国人を対象に、日本語指導をおこなっています。今は、小学生から60代までの学習者さんがいらっしゃいます。学習者さんのニーズに応じた指導を心がけていて、結婚して日本に来られた方に生活のための日本語や広島弁を教えたり、留学生が書いた論文の日本語を直したりしています。生活や言葉を援助するための書類づくりや、学習者さんが通っている学校、教育委員会との連携もしています。
吉本:活動を始めるきっかけになった出来事などはあったのでしょうか。
美濃:中学校教員として勤務していたときの経験が今の活動につながっています。当時、保護者の都合で中学生になってペルーやフィリピンから来日した学生がいたんです。言葉、生活、交友関係… どうしても困りますよね。小学生で来日すると言葉の飲み込みが早いですが、中学生になるとちょっと難しい面があります。言葉が通じないと引きこもってしまうこともあります。子どもたちが困っている現実が見えてきたんです。
吉本:ちなみに、それは何年くらい前のお話ですか?
美濃:30年くらい前ですね。こういう現実は今でも続いています。
吉本:ちょっと驚きました。外国にルーツを持つ子どもが最近増えてきている、みたいな取り上げ方がされているように思えますが、その頃から続いているんですね。
美濃:約30年前、文部科学省から派遣されて台湾の台中日本人学校でも勤務しました。私も生活に困りました。台湾語も分かりません。そのとき、市場のおばちゃんが野菜の名前や数の数え方を教えてくれるなど、非常に助けてもらいました。私は音楽が専門だったので現地の合唱団にも入って、現地の人たちにとてもよくしてもらいました。帰国日が迫ってきて、何かお礼をしようと思ったんです。現地のお寺で日本語を教えたときに少しながら謝礼をいただいたので、それをお寺に寄付しようと思ったら「お寺では受け取れない。あなたが頑張ったんだから、あなたが何かに使いなさい」って。感謝の気持ちを未来に向けてください、ということですよね。日本に帰って、日本に来ている外国人に同じようなことを返したらいいんじゃないかな、と今の活動を始めました。そのために日本語教師の資格を取りました。
吉本:日本に帰ってから資格を!そうか、それまでは音楽が専門だったから… そういうふうにつながっていたんですね。
美濃:中学校教員を退職するまでになんとか頑張るぞ!って。そうして、日本語教師の資格を取って、定年を迎えました。広島平和文化センターが開いている日本語ボランティア養成講座に行ってみて、そこで日本語教室を開いてみたら?ということになり、竹屋にほんご教室を開きました。2026年5月で2年目。新参者ですから、あまりいろいろ聞かないで(笑)
吉本:そうだったんですね。てっきり、もっと長く運営されているのかと思っていました。教室を実施する中で大事にしていることなどはありますか?
美濃:指導が単調にならないよう、伝統行事の体験として豆まきをしたり、七夕や正月のレクリエーションをしたり、学習者さん同士のつながりを大事にしています。みんなが仲良く暮らせたらいいなと思っているので。
吉本:その中でやりがいを感じた出来事や、忘れられない場面などはありますか?
美濃:短期間ではありましたが、保護者の都合で来日した小学生の学習支援をしたことがあります。何をしたい?と聞いたら「学校に行きたい」と。1週間に1回、日本語教室に来るだけじゃもったいない。橋本優香さんに相談して通訳を手配してもらい、学校に行けるよう手続きをしました。その後ちゃんと学校に行って、言葉は分からないながらも「楽しい」と言っていました。そこから「ひらがなを書きたい」「日本語を喋りたい」と意欲が出てきて。そして最後のお別れで教室に来たとき、きちんと日本語であいさつができたんです。ボランティア一同、よかったね、私たちがやってきた仕事が実った、って。
吉本:美濃さんが台湾で生活していたときに助けてもらった恩を日本で返す、それが叶ったんですね。
美濃:困った人がいたら助ける。それが市民レベルの国際交流じゃないかなと思うんです。お金をもらって教える、ではなく、気持ちをもらって豊かになる。それがボランティア活動じゃないですかね。それから、学習者さんがお互いを尊重しながら学習している姿を見ると、いい雰囲気だなと思います。2025年5月、竹屋公民館が主催のインターナショナルキッチンというイベントがありました。学習者さんが日本語でレシピを考えて説明して、みんなで料理を作って。学習者さんが一生懸命話してくれるから、みんな頑張ろうという気持ちになるんですよね。2026年はパキスタン料理のイベントをやりますよ。これは休みの日のことですが、竹屋にほんご教室のスタッフと親睦を図るため、私の家で一緒にタイ料理を作りました。
吉本:タイ料理、いいですね。でもどうしてタイ料理?
美濃:タイに仲の良い友達がいて、このあいだもタイに行ってきたんです。JICAで勤めていた友人に、タイの子どもたちが日本に来るから広島で受け入れてくれないかと言われて、宿泊や食事を手配したことがあります。それから付き合いが何年か続き、あるとき「タイへの航空券だけ用意して来てください」と言われて、初めてタイへ行きました。言葉は分からないけど、すごくよくしてもらって、最初に覚えた言葉が「お腹いっぱい」。たくさん食べさせてもらいました。生きていくうえで一番大切なものは健康と人のつながり。ひとりぼっちだときっと寂しいと思います。音楽はスピーカーがあれば聴けるのに、どうして人はコンサートに行くのか。音楽はパフォーマーによって違います。お客さんがのってくると、パフォーマーも一生懸命になる。失敗もあるけど、その失敗は生きている、生の証拠。AIが完璧な音楽を作っても無味無臭です。血が通ってないといいますか… 国際交流も血が通ってないと。
吉本:台湾やタイで現地の人にやさしくしてもらった経験が美濃さんの考え、活動に影響していることが伝わります。美濃さん、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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美濃みね子さんにご連絡を取りたい方は、下記までお問い合わせください。お問い合わせ時は「ひろしまNPO人物ファイルを見た」とお伝えいただくとスムーズです。
▽お問い合わせ
ひろしまNPOセンター(担当:吉本)
電話:082-258-1348
メールアドレス:yoshimoto☆npoc.or.jp(☆を@に置き換えてください)
▽竹屋にほんご教室
日時:毎週木曜14:00~16:30
場所:竹屋公民館(広島市中区宝町3-15)
参加費:無料
お問い合わせ:竹屋公民館(電話:082-241-8003)